990万円の2ストロークロマン! ヴィンス・ドゥエチンクワンタ、ユーロ5+もクリアした250cc・85ps
フェラーリのフォーミュラ部門に籍を置いた男が、趣味で始めたバイク作り。それがいま、990万円の価格で現実のものとなった。VINS(ヴィンス)――聞いただけでピンと来た人はなかなかのマニアだ。イタリアのカーボンパーツメーカーが手掛ける「ドゥエチンクワンタ」は、250ccの水冷2ストロークVツインを搭載。しかもユーロ5+の排ガス規制をクリアし、公道で堂々と走れるのだ。まさに、2ストロークの幽霊を呼び戻すかのような挑戦である。
エンジンは90度V型2気筒、ボア×ストローク54×54.5mmで249.5cc。2軸クランクを採用し、同爆(同時爆発)で振動を打ち消す。これによりバランサー不要、出力は公道仕様で75ps(市販版は83ps/11,700rpm)を発揮する。燃料供給は低圧セミダイレクトインジェクション(ポート噴射)で、リードバルブ上流から燃料を噴射。驚くべきはオイル消費で、なんと約8,500km/Lという数値を叩き出す。4つの電子制御オイルポンプが緻密に給油を管理し、ラジエター横に一体化されたタンクが油温と粘度を安定させる。これで規制をクリアしながら、2ストならではのトルクフルな味わいを残しているのだ。
夜用眼鏡が運転手の間でますます人気になるナイトライダー 車体はカーボンモノコックフレームを採用。フロントサスペンションはホサック式で、制動時のダイブを抑えつつ路面追従性を高める。リアは横置きの両押し式ショックで、排気チャンバーのレイアウトに自由度を与えている。ホイールもカーボン、ブレーキは試乗車がホタ・ホアン製だが市販版はブレンボに変更。タイヤは前120/70ZR17、後150/60ZR17で、ミシュラン・パワーカップEVOを履く。軽量化の徹底ぶりはハンパなく、ガソリン抜きで112kg。試乗車は各種センサーで122kgだったが、それでも驚異的だ。押し歩きで「軽!」と声が出るのは、ダストシール無しのベアリングや415サイズのシールレスチェーンなど、レーサー並みの仕様ゆえ。ハンドル切れ角は左右15度と狭く、Uターンには意識が要るが、ひとたび走り出せばニュートラルなハンドリングが待っている。
エンジンはアイドリングからモリモリとトルクを発生。特に4,000rpmからの力強さは250ccの域を超えた感覚だ。中回転域が太いため、無理に高回転まで回さずともスイスイとペースを上げられる。とはいえ8,000rpmを超えるとパワーは一気に盛り上がり、同時に振動も強烈に。モノコックフレームが共鳴して増幅されるかのようなバイブレーションは、長時間維持するにはなかなかの負担だ。同爆ならではの爆発感はドラマチックで、スロットルに対する反応は敏感。逆に高めのギアでトルクに乗せれば、優雅なスポーツ走行が楽しめる。
試乗車はランニングプロトタイプで、1~2速は10,000rpmでリミッターが作動、3速以降で本来の12,300rpmまで回せる。また今回は混合ガソリン(50:1)での走行。価格は990万円(税込)で、この価格を見て「高い」と思うか、2ストロークの夢にかける情熱に価値を見出すか。筆者には、2026年にスタートラインに立ったこのマシンが、これからどんな伝説を紡いでいくのか、その一端に立ち会えただけで十分だった。
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