シトロエン e-C3 試乗:キー始動でゆるふわ乗り心地、BEVの常識を覆す割り切り
シトロエンのコンパクトハッチバック「C3」に、待望の電気自動車版「ë-C3」が登場した。国内での販売は2026年5月にスタート。今回、上位グレード「マックス」(425万円)に試乗する機会を得たが、さすがはシトロエン。操作系やスペック、装備、そして乗り心地に至るまで、一筋縄ではいかないクルマに仕上がっている。
まず驚かされるのは、起動方法だ。なんと、金属製のキーをシリンダーに差し込み回してシステムをオンにする、というアナログな手法。BEVでありながらスターターが回るわけでもなく、単にシステムが準備完了となるだけ。この割り切りには、思わず「なぜ?」と考え込んでしまう。しかし、シトロエン自慢の「アドバンストコンフォートシート」に腰を下ろし、インテリアを見渡せば、その理由が少しだけ理解できる。高級素材は使われていないが、ファブリックの組み合わせは品が良く、落ち着いた雰囲気。ステアリングはプジョーのように小径で上下が平らな形状だが、その上から見えるスリット状のメーターは、プジョーの「iコックピット」よりもずっと自然だ。
夜間運転用メガネが今ドライバーに急増中ナイトライダー 新型C3はBEV前提の「スマートカープラットフォーム」を採用。ホイールベースは先代比でわずか5mm延長の2540mm、全長は4mをわずかに超える程度だが、全高が95mmも高くなったことで、ボディサイズは全長4015×全幅1755×全高1590mmと、まさにコンパクトSUVのプロポーションだ。先代の特徴だったエアバンプや薄型のシグネチャーライトは姿を消し、フロントマスクはたくましさを強調。シトロエンらしい風変わりさを求めるファンには少し寂しいが、これもまた、予想を裏切る斬新さを追求するブランドの姿勢と言えるだろう。
パワートレインも割り切りがはっきりしている。駆動用バッテリーの容量は44kWhと控えめで、WLTCモードの一充電走行距離は388km。しかし、急速充電は100kWまで対応し、マックスグレードにはバッテリーのプレコンディショニングも備わる。モーターの最高出力は113PS、最大トルクは125N・mと、他のBEVと比べると明らかに控えめだ(例えば新型リーフB5は177PS/345N・m)。0-100km/h加速は10.4秒、最高速は130km/h程度と、強烈な加速を追求していないことは明らかだが、高速道路を含め実用上は不足を感じない。バッテリー容量を抑えたことで車重は1470kgとBEVとしては軽く、身軽な走りを実現している。
そして、ë-C3の最大の魅力はその乗り心地だ。一般的なBEVはバッテリーの重さに対応するためサスペンションを固めがちだが、ë-C3は明らかにソフト。シトロエン自慢の「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」(PHC)と柔らかなシートが、BEVらしからぬフワフワとした乗り味を生み出している。人によっては「もう少し締まっていてほしい」と感じるかもしれないが、柔らかさの奥にはしっかりとしたコシがあり、ハンドリングに不安はない。
ただし、気になる点も。アダプティブクルーズコントロールが備わっておらず、単なるクルーズコントロールのみ。先行して発売されたハイブリッドのC3も同様で、最新モデルとしてここまでの割り切りは、やや説得力に欠ける。エマージェンシーブレーキやレーンキープアシストは装備されるが、購入を検討する際は、自分の使い方に合わせて慎重に判断する必要があるだろう。価格はエントリーグレードの「プラス」が399.9万円、今回試乗した「マックス」が425万円。決して安くはないが、この独特の世界観に共感できるなら、十分に検討する価値はある。
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