ホンダNSXレストアが示す未来 S2000やシビックタイプRにも波及するか
ホンダが2026年8月1日より開始した「ホンダヘリテージワークス」による初代NSXのレストアサービスが、クルマ好きの間で大きな話題を呼んでいる。単なるパーツ交換にとどまらない、メーカー本体が直接手掛ける本格的なレストア事業の凄みとは何か。そして、今後のS2000やビート、歴代シビックタイプRへの波及はあるのか——。現場の熱い想いとともに、その全貌に迫る。
ホンダヘリテージワークスの最大の革新は、単なるリフレッシュプランを超えた「完全再生事業」にある。シートは当時風の表皮で内装を張り替え、床面も刷新。アルミボディは素地まで戻してハンドメイドでホワイトボディ全塗装を施すなど、新車の質感を限りなく再現する。走る、曲がる、止まるの基本メニューだけでも1155万円から。外装・内装すべてを施すトータルレストアとなれば、さらにその上を行く価格設定だ。
寝苦しい夜が、これひとつで快適にAirio Pro 30年以上前の個体をバラしていく作業は、想定外のダメージが見つかることも珍しくなく、実際の費用は基本料金の1.5倍近くに膨らむケースも多いという。それでも、ファクトリーの予約枠はすでに満杯。初代NSXはアルミボディのため錆びにくく、フレーム修復に時間を取られない強みがあるが、何よりオーナーの愛情が深い。
現場スタッフは「本当にお客さんには感謝しかない。『パーツが高すぎるぞ』と冗談を言われることもあるが、その裏にはクルマへの愛情があふれている。最後には『本当にありがとう』と言ってもらえる。こんな濃密なコミュニケーションができる部門は珍しい」と語る。子会社や販売店に委託せず、ホンダ技研工業というメーカー本体が直接レストアを行うからこそ、当時の性能と質感にこだわれるのだ。
気になるのは、このサービスがNSXだけで終わるのかどうか。取材陣が「S2000やビート、歴代シビックタイプR(EK9型)などへの横展開はあるか」と質問したところ、スタッフは少し困ったような、嬉しそうな表情を浮かべて答えた。「現時点で具体的な計画はお伝えできない。しかし、公式ホームページの部品復刻要望フォームには多くのオーナーから熱いメッセージが届いている。特にS2000は車検に必要なパーツが出なくて困っているという悲痛な声が多く、市場の実態は痛いほど把握している。NSXだけをやればいいとは決して思っていない」と、期待を抱かせる言葉が聞かれた。
実際、ホンダヘリテージサービス発足時のプレスリリースにも、将来的には他の旧型スポーツタイプの車種にも対象を広げていく予定と明記されている。ただし、過去にはビートやS2000のパーツ復刻を謳いながら、いつの間にかクローズしてしまった苦い経験もある。「ホンダは継続性がない、熱しやすく冷めやすい」という市場の厳しい声を、スタッフたちは痛感している。だからこそ、創設メンバーは「とにかく継続していくこと。事業として収支を成り立たせ、5年、10年、20年と長く続けていくことが最大のミッションだ」と不退転の決意を語る。
このレストア事業は、旧きを興すために新技術を注ぎ込む挑戦そのもの。多くのオーナーが「頼むから継続してくれ」と願うこの航海は、わたしたちが飢えていた「熱きホンダ」の完全復活を予感させる。S2000やシビックタイプR、ビートのオーナーにとって、今後の展開はまさに待望の朗報となるだろう。
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