ホンダ3輪「スリーター」の系譜 ジャイロ以前の衝撃作と電動化の未来
3輪バイクといえば、いまやピザ屋の配達や郵便配達でおなじみのホンダ「ジャイロX」が真っ先に思い浮かぶ。しかしホンダは、1980年代に「スリーター」という独自のカテゴリーを立ち上げ、数多くの3輪モデルを世に送り出していた。バンクしながら曲がれる3輪バイクの歴史を、振り返ってみよう。
ホンダが定義した「スリーター」とは、「スリーホイールでスイング機構を持ち、2輪車の軽快性と4輪車の快適性を併せ持つ乗り物」。その第1弾として1981年11月に発売されたのが「STREAM(ストリーム)」だ。最大の特徴は、「ナイトハルト機構」と呼ばれるフロントボディのスイング機構。コーナリング時に車体が左右に傾き、まるで2輪バイクのようなバンク感覚を味わえる。後輪軸にはデファレンシャルクラッチを備え、左右の回転差を吸収。ゴム製のナイトハルトラバーが復元力を生み出す仕組みで、安定した走行を実現した。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 「ストリーム」は、バックレスト付きシートやフロントトランクも装備した高級志向だったが、価格は19万8000円と当時の原付1種スクーターより高く、販売は伸び悩んだ。そこでホンダは、1983年にスリーター第3弾「JOY(ジョイ)」を投入。価格を9万9800円に抑え、車重46kgの軽量ボディで女性にも人気を集めた。同年5月には兄弟モデル「JUST(ジャスト)」が登場。2速オートマチックを採用し、車重57kg、価格12万9000円でスムーズな走りを提供した。
1984年7月には、スリーター第5弾「ROAD FOX(ロードフォックス)」がデビュー。スクータータイプのフラットフロアをやめ、ステップバーと太いチャンバーマフラーを装備。3輪バギー風のスタイルとゴーカートのような乗り味がコアなファンを獲得し、今も根強い人気を誇るモデルだ。
しかし、ホンダのスリーターは「ジャイロ」シリーズを除き、すべて一代限りで姿を消した。1982年にスリーター第2弾として登場した「ジャイロX」は、その後も改良を重ねて生き残る。1985年には大型リアデッキの「ジャイロ・アップ」、1990年にはルーフ一体型ウインドスクリーンと62Lトランクを備えた「ジャイロ・キャピー」(ワゴンタイプ/デッキタイプ)が追加。エンジンは当初空冷2ストロークだったが、2008年に水冷4ストロークOHC4バルブ+電子制御燃料噴射(FI)に刷新。CO2低減と燃費30%向上を達成した。
しかし、2025年11月から適用される新排出ガス規制に対応できず、2025年10月末をもってエンジン車の生産は終了。代わりに、2021年には電動モデル「ジャイロ e:」「ジャイロキャノピー e:」が登場し、当初は法人向けだったが現在は個人購入も可能だ。ただし、これらは「電動3輪スクーター」と表記され、かつての「スリーター」の名称は使われていない。
「ストリーム」や「ロードフォックス」のような、バンクする楽しさを前面に出した3輪バイクが、原付2種などで復活したら……と夢想してしまうのは、筆者だけではあるまい。
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