トライアンフ「スクランブラー900」が魅せるクラシックとモダンの融合
毎月8のつく日にお届けする「高梨はづきのきおくきろく。」。今回はトライアンフのクラシックシリーズから「Scrambler 900(スクランブラー900)」の2026年モデルを紹介する。
まず目を引くのは、車体右側にスッと伸びたアップマフラー。無骨さとクラシカルな雰囲気が絶妙に融合し、「これぞスクランブラー」と思わせる存在感がある。見た目からは「重そう」「扱うのが大変そう」と感じるかもしれないが、走り出せばその印象は一変する。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 驚くのは車体の扱いやすさ。ハンドル幅が広いため車体を起こしやすく、押し引きも想像以上にラク。車重は224kgと決して軽くないが、重心バランスが良く数字ほどの重さは感じない。大型バイクに不慣れな人でも扱いやすいはずだ。シート高は790mm。数値だけ見ると少し高めだが、車体がスリムなので足を真っすぐ下ろしやすい。身長158cmの筆者でもつま先が接地し、車体の安定感もあって不安はほとんどなかった。
ライディングポジションはアップハンドルにより上体が起き上がり、肩の力が抜けるリラックスした姿勢。目線も高くなるので前が見渡しやすく、街中でも周囲の状況を把握しやすい。長時間のツーリングでも疲れにくく、カフェにふらっと立ち寄るようなカジュアルな服装にもぴったりだ。大型バイクながら、気負わず付き合える印象だった。
走り出して最も印象的だったのはエンジン。アクセルを少し開けただけでグッと前へ押し出される力強さ。この余裕ある走りは、3250rpmという低回転で80Nmの最大トルクを発生する排気量900ccの並列2気筒ならでは。停止からアクセルを開けた瞬間に響く「ドコココッ」というサウンドも気持ちよく、走り出すたびにワクワクさせられる。
乗車中はドコドコとした鼓動感とリズミカルな排気音が心地よく、高速道路をストイックに飛ばすよりも、一般道を時速50~60kmでトコトコ流している時が一番気持ちいいと思えるエンジンだった。フロントタイヤは19インチと少し大きめだが、コーナーでは思った以上に素直なハンドリング。切替可能なライディングモードも搭載され、突然の雨で路面が滑りやすくなっても安心感がある。ちょっとしたフラットダートを見つけた時も「行ってみようかな」と冒険心をくすぐられる。
ブレーキもしっかり効いて安心感があり、教習所のクランクのような細かい切り返しもスッと曲がってくれた。自然に車体が傾いていく感覚がとても気持ちよく、「やっぱりトライアンフって乗りやすい」と改めて感じたポイントだ。
一方、真夏の街乗りでは右足付近に熱がこもりやすく、暑さを感じた。とはいえ、それもスクランブラーらしい味のひとつかもしれない。秋や冬なら逆に心地よく感じられそうだ。
トライアンフのクラシックレンジは大きく900ccシリーズと1200ccシリーズに分かれ、基本設計は2016年から続く熟成されたプラットフォームを採用。排出ガス規制への対応を重ねながら長く愛され続けている。2026年のマイナーチェンジではサイレンサーやサイドカバー、シート形状など細かなデザインが見直され、より洗練されたスタイルへ進化した。大きな性能変更はなく、扱いやすさや乗り味はそのまま受け継がれている。1200ccクラスのパワフルさも魅力的だが、気負わず毎日でも乗りたくなるフレンドリーさは900ccクラスならではの良さだ。
燃料タンク容量は12Lで、カタログ燃費(WMTCモード)は約23.2km/L。ツーリングで穏やかに走ればもう少し伸びそうだ。燃料警告灯は残り3L(約9L消費時)で点灯するため、実質的に安心して走れる距離は200~230kmくらい。高速道路や幹線道路で休憩を挟みながら走ると、およそ3~4時間程度の距離感。150~180km走ったら休憩がてら給油するリズムで走れば、給油ランプの心配もなく気持ちよく過ごせる。航続距離を競うようなバイクではないが、景色のいい場所や気になるカフェに立ち寄りながら走るなら、このくらいの容量がちょうどいい。
「スクランブラー900」は、見た目だけをクラシックに仕上げたバイクではなく、エンジンの造形や細かなパーツまで丁寧に作り込まれ、眺めている時間も楽しい。走れば大型らしい鼓動感がしっかり味わえ、見た目はワイルドだが付き合ってみるととても素直。目的地まで最短距離で向かうより、道中を楽しみたくなる人、スクランブラーが気になっている人、「大型って難しそう」と思っている人に、一度体感してみてほしいバイクだ。
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