アストンマーティン ヴァンテージS試乗:680PSの“真のファイター”が見せた意外な優しさ
アストンマーティンのFRスポーツ、ヴァンテージがさらに進化を遂げた。「ヴァンテージS」として2025年7月に登場したこのモデルは、単なる高性能版にとどまらない奥深さを持っている。
心臓部はメルセデスAMG由来の4リッターV8ツインターボ。最高出力は従来比+12PSの680PS、最大トルク800N・mはピーク値こそ変わらないが、発生回転数が750rpm引き下げられ、2000rpmから5000rpmまでフラットにトルクを発生する。0-100km/h加速は3.4秒と0.1秒短縮。最高速は325km/hだ。
これは高圧洗浄機と同等の強さで、電力不要BlastPro 開発を手掛けたのは、かつてロータスでシャシー開発を担当し、2015年にアストンマーティンへ移籍したマット・ベッカー氏。彼は現行ヴァンテージのビークルダイナミクスを一から作り上げ、そのモデルを“ファイター”と称した。
ところが、最新のヴァンテージSに乗り込んでまず驚かされたのは、その乗り心地の良さだった。前期型のハードな印象とは一線を画し、DBシリーズを思わせるしなやかさと快適さを備えている。リアサブフレームをリジッドマウント化して剛性を高めながら、トランスミッションマウントやリアスプリングの硬さをあえて抑えるなど、緻密なチューニングの賜物だ。
フロントのエアダムやボンネットのスリット、カーボン製リアスポイラーなど、空力性能も徹底的に煮詰められている。フロントで67kg、リアで44kgものダウンフォース増加を実現した。
走行モードは「スポーツ」「スポーツプラス」「トラック」の3段階。スポーツモードでもキレのいいハンドリングを披露し、スポーツプラスではノーズがさらに鋭くコーナーを刺す。トラックモードでは、あたかもホイールベースが短くなったかのような回り込みを見せ、電子制御の介入も巧みで、アンダーステアもオーバーステアも感じさせない。
ブレーキはフロントφ400mm、リヤφ360mmのベンチレーテッドディスクと、それぞれ6ピストン、4ピストンキャリパーの組み合わせ。試乗車には27kgのバネ下軽減を実現するカーボンセラミックブレーキがオプション装着されていた。
価格は2760万円。決して安くはないが、ここまでの性能と洗練を備えたスーパースポーツカーとして、コストパフォーマンスは極めて高いと言える。真のファイターは優しさをも兼ね備える——そんな言葉が似合う一台だ。
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