事故ゼロへ、トヨタが旗振る「タテシナ会議」の本気。人・クルマ・インフラが三位一体で挑む新ステージ
交通事故ゼロ。クルマ好きなら一度は夢見るそのゴールは、しかし近年、現実の壁にぶつかっている。死者・負傷者数は長期では減少傾向にあるものの、ここに来て下げ止まりの傾向が顕著だ。この状況を打破すべく、一般財団法人トヨタ・モビリティ基金(TMF)が主催する「タテシナ会議」が第4回目を迎え、長野県茅野市で開催された。
この会議のルーツは実にユニークだ。1970年に交通安全祈願のために建立された蓼科山聖光寺を原点とし、「事故ゼロを目指して何ができるか」を業界の垣根を越えて考え、行動に移す場として2019年にスタート。今回の参加者にはトヨタ自動車、スズキ、スバル、マツダ、ホンダといった自動車メーカーはもちろん、損害保険各社、KDDI、京セラ、東京科学大学など約80名が名を連ねた。まさにオールジャパン体制である。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 会議の冒頭、愛知トヨタEAST/WESTの山口真史氏が聖光寺の起源を説明し、参加者全員で再確認したのは「目標は事故の『削減』ではなく『ゼロ』である」という原点。ここから議論は、大きく二つのテーマに分かれて進んだ。
一つ目のテーマは「人の行動変容」。モータージャーナリストでTMF理事の岡崎五朗氏が報告したのは、交通事故リスクが高い7歳児と高齢ドライバーへの具体的アプローチだ。児童向けには道路上の危険を疑似体験できるツールや親子学習アプリを開発・実証し、小学校での出張授業も実施。一定の効果は確認できたものの、家庭・学校・地域が連携して継続的に学べる機会の整備が課題として浮き彫りになった。
高齢ドライバー向けでは、ドライブレコーダーの映像を用いた運転診断や、地域コミュニティでのグループ振り返りが効果的と判明。特に、健康づくりと組み合わせることで運転診断への納得感が高まるというデータが得られた。重要なのは、この取り組みを「運転可否の判断」ではなく、生活を維持・向上させるための仕組みとして社会に浸透させること。免許返納ありきではない、伴走型の支援が今後求められる。
二つ目のテーマは「インフラ協調」。トヨタ副社長でTMF理事の中嶋裕樹氏は、自動運転技術が進化しても、死角からの飛び出しなどクルマ単体では防げない事故が存在すると指摘。そこで鍵となるのがスマートポールだ。クルマからは見えない危険を早期に認知し、ドライバーだけでなく、スマートフォンや自転車搭載型デバイスを通じて歩行者や自転車利用者にも危険を知らせる技術が紹介された。
さらに、インフラやクルマ、スマートフォンから集めたデータをAIで分析し、人の行動を予測することで事故を未然に防ぐ。危険行動の要因を解明するという未来像も提示された。もちろん、通信規格の統一やインフラ整備の費用分担、データ共有の在り方など課題は山積だ。しかし、各分野の技術と知見を持ち寄り、地域の販売店と連携して実証を進めていく方針が確認された。
タテシナ会議は、交通安全への祈りを原点に、多様な関係者が「交通安全はみんなでつくるもの」として行動を加速させる。クルマのハードウェア性能だけでは到達できない「事故ゼロ」の世界。その実現に向けた、人とクルマとインフラの三位一体の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
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